最高裁判所第二小法廷 昭和39年(行ツ)11号 判決
上告理由第一点及び第二点について。
論旨は、要するに、本願実用新案と同一の内容を有する上告人出願に係る「異る位置で粘稠物を加熱する装置」なる実用新案が本願実用新案の登録出願後に登録された事実があるにもかかわらず、原審が本願実用新案は考案を構成しないと判断したことが事実誤認、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号,以下同じ。)一条の解釈適用を誤つたものである、と主張する。
しかし、前記の事実は、原審の口頭弁論に上程されていないのみならず、所論登録実用新案は本願実用新案とその請求の範囲を異にしていること上告人の主張自体によつて明らかであるから、それが登録されたからといつて本願実用新案が考案を構成しないとした原案の判断が違法となるわけのものではない。
それ故、論旨は、上告適法の理由とは認められない。
同第三点について。
論旨は、原判決が本願実用新案と引用例とを比較しておきながら、本願実用新案は新規性を有しないというなら格別、考案そのものを構成しないと判断したことが理由齟齬、旧実用新案法一条の適用を誤つたものである、と主張する。
しかし、原審は本願実用新案と引用例とを比較して、前叙のごとく、本願実用新案の電熱器及び三極開閉器はそれぞれ引用例の電熱体及び三段発熱用開閉器に相当し、両考案ともに開閉器によつて並列又は直列にその接続の切替えをすることができる点において一致し、ただ、本願実用新案が直列接続の回路に変圧器(「自動電流調整器」)を取り付けており、また、上記のごとき電気加熱装置を二組備えている等の点において引用例と構造を異にしていることが認められるとはいえ、これらの点は、個々的にみてもまた総合してみても、引用例から格段の工夫を要することなく容易に着想し得べき程度のものであると認め、従つて、本願実用新案が実用ある型に関する現在の水準と同一のものであつて、旧実用新案法一条の考案を構成しないと判断したものであり、かような判断も、その確定に係る事実関係の下においては、なし得ないものではなく、論旨は、所詮、原審の専権に属する事実の認定を非難するに帰する。
さらに、論旨は、原審が刊行物記載の考案と比較しその効果において著しい差異のあるものは容易に着想し得る考案とはなし得ないと解するのが相当であると判示したことが旧実用新案法一条の解釈を誤つたものである、と主張する。
しかし、原審の上記判示は、もともと無用の傍論にすぎないものであるから、その違法をいう論旨は、上告適法の理由とは認められない。
されば、論旨は、いずれも、採用の限りでない。
同第四点について。
論旨は、原審において被上告人の指定代理人であつた芝崎政信が裁判所調査官として本件の調査を担当したと主張し、そのことを理由として、原判決は破棄されるべきである、という。
しかし、仮りに所論のごとき事実があつたとしても、裁判所調査官は、裁判官の命を受けて事件の審理及び裁判に関して必要な調査を掌るにすぎないものであり、もとより、裁判に関与するものではない。従つて、論旨は、上告適法の理由とは認められない。
(奥野、草鹿、城戸、色川各裁判官)